原状回復義務とは?

敷金返還において問題になるのは原状回復義務」についてです。

賃貸人や不動産業者と賃借人の原状回復義務に関する認識の違いが敷金返還におけるトラブルの主な原因となっています。

 

国土交通省が作成し公表しております「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」において、「原状回復」について以下のように定義されています。

 

「原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」

 

つまり、原状回復とは部屋を新品の状態に戻して返すという意味ではもちろんありませんし、普通に使用していた場合の「経年変化」「通常損耗」によるものは、借主に原状回復義務は発生しないということです。

   

また、民法第601条及び第606条1項には以下のように定められています。

 

「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」民601)

 

「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う 。」 (民606-1)

 

このように賃貸人は賃料を受け取る代わりに、賃借物を使用及び収益できるように必要な修繕をする義務があるということがきっちり民法で決められています。

 

「経年変化」「通常損耗」によるものの修繕費は当然毎月の賃料に含まれているのです。

 

 

「経年変化」「通常損耗」の一例

一般的に「経年変化」「通常損耗」と判断され、借主に原状回復義務はなく、貸主が負担すべきものと考えられるものの一例を挙げておきます。

 

  1. ① 鍵の取替え(紛失・破損がない場合)
  2. ② クロスの変色(日照・自然現象によるもの)
  3. ③ クロスのタバコのヤニ(クリーニングで除去できる程度のもの)
  4. ④ 壁のピン、画鋲等の穴
  5. ⑤ 冷蔵庫等の裏の壁の黒ずみ・電気ヤケ
  6. ⑥ フローリングの変色(日照等によるもの)
  7. ⑦ フローリングの細かな擦り傷(通常使用によるもの)
  8. ⑧ フローリングのワックスがけ
  9. ⑨ 畳の裏返し、表替え
  10. ⑩ ハウスクリーニング、消毒等 
  11.    
ふすま

減価償却資産の耐用年数について

それでは、もし賃借人の故意または過失等により、賃借人がその修繕費用の負担をすべき場合に、賃借人はその全額を負担しなければならないのでしょうか?

 

例えば、引越しの際に壁に家具をぶつけてクロスが破れてめくれてしまった場合には、賃借人の過失によるため、経年変化や通常損耗とはならず、賃借人がその修繕費用を負担します。

 

しかし、そのクロスが入居時には新品であったとしても、時間の経過によりその価値はどんどん減少していきます。国交省のガイドラインによると6~8年がその耐用年数であり、それ以後はその価値は0円になると考えられています。

 

つまり、上記の例ですと、10年入居していた場合には、既にそのクロスは耐用年数を超えており価値は0円であるので、借主による修繕費用の負担はないということになります。

 

部屋

入居期間が1~2年なら85%程度、3~4年なら50%程度、6~8年以上なら0%が借主の負担となるというのが、減価償却資産等の耐用年数を考慮した原状回復費用の負担割合の計算方法となります。

 

一般的に長期間入居しているほど、高額の原状回復費用を請求されてもやむをえないというイメージがありますが、実は逆なのです。

 

15年も住んだのだから、敷金は返ってこなくてもしかたがない。逆に請求されないだけでも良かったなんていうのは、大きな間違いです。

 

なお、全てのものに減価償却資産等の耐用年数を考慮できるわけではありませんし、物によって年数も違いますので詳細はお問い合わせください。

 

 

   

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行政書士 横山孝行
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